第4章 新小岩から高円寺


第4章 新小岩から高円寺
その後も、時々、SMクラブでお化粧して遊ぶ日々が続いていた。SMクラブでのプレイは、短時間で終わってしまう為、だんだん、もっと長い時間お化粧して過ごしていたいと思うようになっていった。

ニューハーフ系の雑誌を見ていると、小さな広告が目に留まった。新小岩に女装して過ごせるスナックが開店したという広告だった。
さっそく、お店に連絡してみると、場所やシステムを教えてもらえた。マンションの一室だった。翌日、衣装を持って、その部屋に向かった。

チャイムを押すとき、ちょっと、ドキドキした。男性がドアを開けた。ドアが開けられると、薄暗い照明の廊下が続いていた。廊下の途中の部屋に通された。そこは、化粧台が置かれ、着替えやお化粧をする部屋になっているようだった。案内の男性は、そこで待つようにと告げると出て行った。部屋の中を見回したが、簡素な化粧台と更衣用のハンガーがあるだけだった。部屋の中は清潔だった。

しばらくすると、中年のニューハーフの人が現れた。Rと名乗った。改めて、システムを教えられた。別にお化粧をして過ごす部屋があって、何時間過ごしても、全部で料金は1万円ということだった。そして、絵夢に服を着替えるように告げて、部屋を出て行った。

黒のミニスカと白のカットソーを着た。Rさんが部屋に戻ってきた。そして、お化粧を教えると言われた。
絵夢は、ベースファンデーションからお化粧を始めた。Rさんは、顔の陰影のつけ方や、眉の引き方、口紅のつけ方など、ニューハーフならではの化粧方法を教えてくれた。この化粧方法は、その後もずっと役に立った。

お化粧を終えると、部屋を出て、リビングへ案内された。暗い照明の毛足の長いカーペットが敷き詰められた、ゆったりした部屋になっていた。部屋に入ると、女装の子が一人座っていた。Mさんという方だった。Mさんとは、その後、いろんなお店で再会することになる。

飲み物を出してもらって、一息ついた。緊張もほぐれてきた。MさんやRさんとおしゃべりをして、過ごした。リビングの壁には、その部屋を訪問した女装のこの写真がたくさん貼ってあった。エリザベス会館で見たことのある人もいた。

その部屋では、ときにはハプニングもあるようだったが、その夜は、特に何も無く、夜も更けたので、お化粧を落として帰宅した。その部屋のメリットはお化粧を教えてもらえたことだった。

その後、何度か訪問したが、平日の夜に訪問するためか、あまり人に会うことは無かった。そうしていると、お店の場所が変わるとRさんから聞かされた。
新しいお店に移転してから、久しぶりに訪問してみた。お化粧をする部屋と、お店は20m位はなれた場所にあった。お化粧を終えて、コートを羽織って、お店まで連れて行ってもらった。実は、それが初めての外歩きだった。人通りのある繁華街だったので、かなり恥ずかしかった。

お店に入ると、そこは、ニューハーフと男性、女装者も入れるというお店だった。フィリピン系のニューハーフが数人待機していた。男性客の相手は、ニューハーフの彼女たちがするようだった。彼女たちと話をしていると、仕草や、言葉遣いなど、お店での会話や接客の仕方を教えてくれた。
Rさんは、絵夢にビラを配ってきて欲しいと頼んできた。面白い経験なので、ニューハーフの子と二人で店の外に出た。お店は、歓楽街にあったので、夜になってもかなり人通りがあった。ビラを渡そうとすると、しげしげと絵夢の顔を見てビラをもらう人、避ける人、中にはお店の場所を聞いてくる人もいた。なかなか面白い体験が出来た。外にいることも、平気になっていた。

その後、しばらく、昼の仕事が忙しく、数ヶ月、そのお店に行くことができなかった。すると、いつの間にか、お店がなくなっていた。
エリザベス会館に、月に1・2回通ってお化粧を楽しんでいた。ある日、夕刊紙を見ていると、高円寺に新しいお店ができたという小さな広告が出ていた。

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